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2006年07月13日

夢とアイデアの違い

夢とアイデアは違う。

wikipediaなどを見ると、どちらも歴史的にさまざまな定義が試みられてきたことがわかる。
どちらもひとつには定義できていないようだ。


さて、仕事術の一つとして、「夢とアイデアの違いを自覚して話す」という技術があるとおもう。

仕事術とは、何かの問題を解決するために、どのように行動すれば効率がいいかのノウハウのことである。
知識労働においては、問題解決とは、アイデアを創出することによってもたらされる。
知識や技術を売りにしている企業では、いかにアイデアを出して、それを他に伝えていくかが重要になる。

夢をいくら語っても仕事は進まないが、夢がないとアイデアは生まれないときもある。
どちらも必要だが、状況によって必要なバランスというのがあるのである。

夢とアイデアについての私の考えはこうだ:

まず、夢は、結果だが、アイデアは、手段である。
言い換えると、夢は、「〜したい。」で終わるが、 アイデアは、「〜できる。」で終わる。

夢の例:部屋の壁の全面をディスプレイにしたい。
アイデアの例:DELLが売っている30インチのディスプレイが30枚あれば壁面全部をディスプレイにすることができる。

また、夢を実現するためには、まだ存在しない技術が必要になるが、
アイデアを実現するためには、すでに存在している技術をそのアイデアに沿って組み合わせるだけで実現できる。

「夢と現実」という言葉があるが、アイデアは現実である。

夢には制約がないが、現実には制約がある。
人間は、制約が多いほうが問題解決のアイデアが生まれやすい。

夢を語るときには、頭の中で計算は行われない。
しかし、アイデアを語るときには、何らかの計算やロジックが使われる。
それは、「〜できる」と言うためには必要なことだからだ。

夢を忘れずに毎日努力を続けると、それはアイデアに近づいていく。
たとえば、20年前は、軌道エレベーターは夢だったが、現在は、アイデアになっている。
もし夢について語ることがなかったら、軌道エレベーターを実現するための
カーボンナノチューブの織り方などに関するアイデアは出てこないだろう。

夢もアイデアも両方、大事にしないといけない。
では、どれぐらいのバランスが良いのだろうか?

私が大好きなサイトEngadgetでは、
夢とアイデア(現実)のバランスがちょうどいいように感じる。

このサイトで紹介されるものは、すでに発明されたものや、
アイデアとしてコンセプトモデルが出てきたものが98%、
純粋な夢が2%ほど含まれている。

また、製品の紹介の最後に、記者が個人的に抱いている夢が、
記事が30行であれば1~2行といった具合に、
わずかに記載されていることがある。

Engadgetでは、 夢:アイデア = 2:98 程度である。 このバランスはとてもいい!

たとえば1時間の会議をこの比率にあわせれば、72秒間は夢、
それ以外はぜんぶアイデアについて話しているという具合である。

72秒ぶんの夢というのは、結構多い。
「人類が火星に進出したら、そこには過去の人類が作り上げた都市構造物がまだなくて、
さらに、火星におけるほとんどの作業は地球や宇宙船からリモートでロボットを使って
行うことになる。だから、火星の都市は、人間にとって使いやすいデザインではなくて、
ロボットにとって使いやすい都市のデザインをして、人間用の部分は最小限にとどめておくのがいいのでは。。」
というようなことの場合でも、話すとしたら30秒もかからないだろう。

これだけ夢があれば十分だ。
実際にこの夢を実現するために必要なアイデアを出すために頭をひねっていれば、
残りの59分は、あっというまに過ぎる。
火星の重力を調べたり、弱重力における建築について調べたり、
地球と交信するときに起きる遅延について考えたり、といったことに59分を使い、
夢については1分だけにする。

いい感じではないか。

仕事における議論では、このバランスを常に意識しながら時間を使っていくのがいいと思う。

Posted by ringo : 09:10 | TrackBack