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2006年09月29日
文字というメディアの優位性
長尾のブログより。
未踏ソフトウェア創造事業のときにお世話になった長尾先生のエントリ。
長尾先生は、文字によるコミュニケーションが重要であると、以前から常に言っている。
会うたびにかならずその話題が登場するほどだ。
しかし、文字によるコミュニケーションが、
なぜそれほど重要なのかについて、私は深く考えたことがなかったし、
先生に質問したこともなかった。
だから今日は寝ながらそれについて考えた。
まず、自分の体験では、文字によるコミュニケーションが得意な人のほうが、
知識が多く、仕事効率もよく、発想も広く、友達も多く、収入も多い傾向がある。
長尾先生のいう「エリート」はその究極の姿だろうとは思うが、
それほどではないにしても、情報処理能力の高い人は、
文字情報の処理と発信が得意だと言ってよい。
それはなぜだろうか。
情報処理能力が生まれつき高いから文字の扱いが得意なのか、
文字の扱いが得意だから情報処理能力が高まったのか、多分その両方だが、
人間が生まれつき文盲であることを考えると、後者が強い可能性が高い気はする。
さて、話しを簡単にするために、現在デジタル化されている、
以下の5つのコンテンツについて考えてみる。
文字、画像、映像、音声、インタラクティブ(ゲームのようなもの)。
文字とそれ以外すべての違いは、文字以外のものは、
ランダムアクセス性が非常に悪いということである。
現在は以下のようだ。
ランダムアクセスコンテンツ:文字
シーケンシャルアクセスコンテンツ:画像、映像、音声、インタラクティブ
ランダムアクセスはシーケンシャルアクセスを含む。
小説のようなコンテンツは、ランダムアクセスメディアをシーケンシャルに使っている。
そのために小説は映画などのシーケンシャルコンテンツに変換しやすい。
ディープタギングなどの方法によって、
画像、映像、音声、インタラクティブなものについても、
ランダムアクセスメディアに近づけることはできる。
たとえば、写真や映像や音声の一部にタグをつける、バーチャルマシンに状態を保存して
ゲームを途中から再現するといったことである。
当然、長尾先生はこれらの技術についてのさまざまな研究を進めている。
ランダムアクセス性の違いは、リアルタイム性についての違いも生みだす。
映像や音声を高速に再生し、閲覧するための技術をまだ人間は持っていない。
「1時間の映像を見るために1時間必要」というのは、非常に効率が悪い。
ここも技術による改善の対象となるべきだ。
目の見えない人は、音声を10倍速で聞いたりすることができるという。
しかし文字だとランダムアクセス性のおかげで、
100倍や1000倍といった速度で処理(スキミング)することがたやすい。
映像や音声を、全く異なる早さで体験する手段があってよい。
いま私たちが開発している tagiriなどは、
将来そういったことができるツールになっていく。
動画を動画として見るのではなく情報を見ると考え、
シーケンシャルアクセス性とリアルタイム性とを排除し、
動画の利用効率を飛躍的に高めるのである。
抽象度(圧縮率)という点でも文字は飛び抜けている。
画像、映像、音声については、あくまでもCCDやマイクなどの
センサーで撮像した、生の入力データでしかないのに対し、
文字は生の入力データを高度に処理した結果の産物であり、
1ビットあたりの情報量が非常に多い。
文字は、脳に構造的に内蔵されている、
情報圧縮展開機能をフル活用できるメディアなのである。
mp3の音声と楽譜を比べたときのビット数の違いだとも言える。
圧縮率でいえば、数万倍から数億倍という効率になっているはずである。
当然、これは不可逆圧縮なので、
文字で「川」と書くときと映像で川を表現したときとでは、
同じものが再現されるとは限らない。
しかし不可逆圧縮方式で事足りる問題が非常に多いことは、
JPEGやmp3やMPEGなど、日常生活の必需品たちが証明している。
まとめると、文字システムは、
「数億倍の圧縮率と、超高速展開が可能で、ランダムアクセス可能な不可逆圧縮方式」
なのである。こんなすごい特徴をもつ技術が他にあるだろうか。
コンピューター上でこのような機能を実現したハッカーはまだいないだろう。
幸いにして、人間の脳にはこれのためのハードウェアアクセラレーターが内蔵されていて、
しかも生まれてからもそのチューニングをやり続けるための社会システムまで存在する。
このハードウェアをうまく活用して生活に役立てる人と、
そうでない人の、生態系内でのありかたがちがってくるのは、
仕方がないことなのかもしれない。
しかし、その格差も、さまざまな技術を導入することで、
相当程度克服できるはずだし、自分もその技術開発をやっていきたいと思う。
これによって、長尾先生のいう「webの望ましい変化」にすこしでも貢献できたらうれしい。
Posted by ringo : 2006年09月29日 10:04
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