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2007年07月10日
U字発達
最近、幼児の発達や神経の動きについていくつかの本を読んだが、
その中でも「U字発達」の考えが印象に残った。
たとえばこういう本など。 認知発達の心理学
赤ん坊の動きを観察すると、
生後4ヶ月ぐらいまでは体をランダムに激しく動かす時期があり、
そのあと半年ぐらいはおとなしくて動きのない状態を経由し、
その後、ランダムでない、構造化された動きが増えるのだと言う。
幼児の活動性を時間軸にして絵にすると、発達途中に落ち込む部分があるためU字型になる。
そのために、U字発達と言っている。
脳の神経で起こっていることはおよそ以下のようだという。
1. 胎内にいる間に、ランダム性が非常に高く、無駄な結合の多いカオスを脳内に用意する。
2. 世界に対してランダムにアクセスすることを通して基本的な物理法則を学習し、
脳内の不要な結合を捨てる。このとき、極端に神経の結合が減るのだという。
3. 結合を減らして、結合の異方性が高い状態を作り、今後のより複雑な学習にそなえる。
4. 20代になるまで、結合の量が増え続ける。
これを計算機の用語に置き換えると以下のようになるだろう。
1. 胎内にいる間に、ゴミだらけだが容量の多いメモリを用意する。
2. ゴミの部分を減らす。メモリの容量も同時に減らすが、
基本的なデータ構造(intやfloatなどの基本型)を導入する。
3. その後は、基本データ構造にそったかたちで学習を続ける。その分、柔軟性は減っている。
4. 構造体やクラスなどのデータ構造を追加しながら学習を進めてゆく。
あるいはもっと単純化すると
1. 自然を観察する。
2. DBスキーマを定義する。
3. DBスキーマにしたがってデータを追加していく。
4. たまにスキーマを変更するが、根本部分は変えない。(indexを追加するだけとか)
いちど2の結合の非常に少ない状態を経由するのがポイントである。
「ネットワーク結合の異方性が増える」というときの「異方性」とは、
「ある構造以外をとりにくい」という性質である。
たとえば磁石のSとNは引き合うという性質を持っていて、
それ以外の動きが起こりにくい。そのために構造が生まれ、情報の蓄積が可能となる。
型の導入は、メモリ内部の異方性を高めるという事そのものである。
結合の数は減っても、異方性が増えれば、今後の学習をその上に積み上げることができる。
文字の数を少ない種類に制限することで蓄積できる情報量が増えるのも同じことである。
これをイメージするには、プラスチックの粉とレゴをくらべてみると良い。
両方は同じものだが、レゴブロックのもつ異方性(ポッチ同士はつながらない)によって、
初めて作れるようになる構造が多くあるのだ。
プログラミングとは、メモリやプロセッサの動きに異方性を作り込む作業に他ならない。
さて、2の状態に入るとき、一旦メモリの量を減らし、
強制的に異方性を作り出すところがポイントである。
この段階では、データが何も蓄積されていないので、できることが非常に少ない。
そのため赤ん坊の動きは非常にすくなくなる。
しかしこの極小の段階を経由して基本的なデータ型を定義しておかないと、
その後の構造の発展がない、というのである。
胎児だけではなく、通常の学習においても、
このパターンの繰り返しは随所にあらわれていると思う。
1. まずランダムにさまざまなことを体験あるいは勉強する。大量の事柄を経験する。
2. じっくりと考える時間をとり、忘れて良いこととそうでないことに分けて、
必要ないものは積極的に忘れる。これにより知識の結合の異方性を高める。
3. 少なくなった知識を、ほかのことに応用してゆく。
4. その後は、少ない知識の組み合わせの数を増やす方向で学習を進める。
学習の段階で根本的なレベルでの柔軟性を捨て、その分、後で学習できる量を増やす。
企業において、学習のシステムを設計するときにも、この話はヒントになると思う。
たとえば、非常に忙しい時間を過ごした後に、きっちりとポストモーテムし、
さらに長めの休みや余裕をもって仕事ができる期間を置くといったシステムなどが
長期的にみれば必要不可欠である、という説明が可能になるかもしれない。
さらに発達の科学を応用するなら、忙しい期間とひまな期間をどの程度の時間配分にすべきか、
ということもヒントが得られる。成人は胎児とは異なるが、
たとえば胎児と同じと考えるならば、15ヶ月は忙しい、3ヶ月は余裕をおく、
というパターンを繰り返すようにするのが良いかも、などなど。。
成人も胎児と同じタイプの脳神経を持っているのだから、応用の仕方は見つかるだろう。
Webとの関連で、「集合知」のシステムにも同様の理論が適用できたりすると、
さらに面白いかもしれない。
Posted by ringo : 2007年07月10日 11:18
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トラックバックスパムがあまりに多いための処置なので、ご了承ください。
コメント
http://ci.nii.ac.jp/naid/110001159008/en/
ここから行けそうですね。ありがとうございます!
投稿者 ringo : 2007年07月30日 09:52
U shapeは多賀さんの研究を調べるといいよ。
投稿者 鈴木健 : 2007年07月29日 23:57


