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2005年08月08日

シミュレーターで戦争を記憶する

毎年、広島に原爆が投下された8月6日に近くなると、NHKを中心とするテレビや新聞では、
「原爆を忘れるな」「戦争反対」というメッセージをこめた番組や記事が多くなる。

私は毎日、数十から百以上のブログを読むが、先週〜今週にかけて、
戦争のことに触れているブログはほとんどないようだ。
ブロガーたちは、戦争に興味がないのか、あるいは私の世界がとても狭いのか、その両方か。

というわけで今日は、ブロガーやテクノロジーおたくたちの興味を喚起できる、
戦争の記憶を忘れない方法を考えた。

まず、1945年8月6日の広島を、高性能な物理シミュレーター内に再現する。
そこには14万人以上の広島市民が、木造建築の家に住んでいて、
通学中の子供や鉄道などもリアルタイムに動いている。
そこに原爆が投下され、地上580メートルで、大量の中性子とX線を放射する。
衝撃波や光線、建物や服の材質による中性子の遮蔽、水の蒸発、
大気の対流などがシミュレートされる。カメラを引いて、
大気圏外から原爆の様子を見ることもできる。
建物をコンクリートに変更したり、爆薬の量を増やしたり、
街の中心部に湖や川を設置したりといった実験もできる。
核シェルターを用意すると住民は、自動的にそれを最大限に利用する。
こういった原爆シミュレーションを精緻に実装し、操作できるようにする。
ここまでのシミュレーターは「初期被害フェーズ」と呼ばれる。

次の段階として、「中〜長期被害フェーズ」のシミュレーションが用意されている。
初期爆発のX線被害により染色体に損傷を受けた人、
土壌に蓄積された放射能を帯びた土で育てた作物からの生物への蓄積
などをシミュレートする。このモードでは物理シミュレーターではなく、
人体内部のシミュレーションがおこなわれる。
「初期被害フェーズ」で生き残った全キャラクター(5〜10万人)が
それぞれ異なる初期状態でシミュレートされ、その後100年間にわたり、
それぞれの人が死ぬまでを計算し、グラフ化していく。
放射能の急性障害、免疫系の障害、白血病、慢性のがん、遺伝性の病気、
小頭症など、あらゆる病気が再現される。

ユーザーは、自由にマップを作成できる。
たとえば東京や上海、ニューヨークなど、実在するほかの都市のマップを
共同で作り、webにアップロードでき、共有し、評論できる。

実際の軍事用の核兵器シミュレーターほどの精度は必要ない。
目的は、自分で、核兵器のスイッチを押し、
たくさんの人を殺す体験をできるようにすることである。
じっさいに殺してみないと、それがどれほど罪深いことなのかがわからないだろう。

文部科学省と提携して、 "HIROSHIMA" という名前のゲームをプレステ3で作り、
世界で販売するのはどうだろうか。

シミュレーションに必要な面積を32km四方とすると、
25m四方のセルに分割すると160万セルとなる。
きのこ雲を実現するには、縦方向にかなりメモリが必要だから、各セルに100バイトわりあてると、
160MBのメモリが必要となる。さらにそこに20万人がいるのだから、
一人あたり500バイトをわりあてると、100MBのメモリが必要である。
25m四方には建物も平均して1個〜0.2個程度はあるだろうが、建物の形状などは、
さまざまに再利用すれば、それほど多くは必要ないかもしれない、ということで、
人数分(20万件)あればよいだろうから、ひとつ1KBとすると、200MBのメモリが必要である。
これで合計460MBとなり、あと50MBほどは描画などのために使う。
プレステ3の性能があれば、現実的に可能な範囲だと思うが、どうかな?

これが売れれば、日本の戦争の記憶を世界中の人に覚えさせることができるだろう。
もう、「教科書の解釈がどうたら・・」という、不毛な議論は終わり。
「HIROSHIMAのシミュレーター見てから文句言え」で終わりだ。
さらに、シミュレーターのソースコードを公開し、「水の蒸発率がおかしいぞ」
「染色体はこんなに壊れやすくないぞ」とかいう議論を巻きおこしてしまえばいいのだ。
議論が沸騰すれば、さらに多くの人の記憶に残っていくだろう。


Posted by ringo : 11:16 | TrackBack